2023.06.23
マーケティング

ブランドも人も“育てる”!「CLASSY.Plus」の考え方

「CLASSY.」といえば、働くアラサー女子のための総合ファッション誌。来年には創刊40周年を迎える老舗の雑誌でありながら、独特すぎる設定の着回し記事がTwitterでバズったり、TikTokでオフショット動画を発信していたりと、SNSでの存在感も大きいメディアです。

公式サイト「CLASSY.ONLINE」では、オリジナルの記事を月250本以上公開。ウェブ限定の有名人登場企画など、本誌に負けないコンテンツの質と量でファンを集めています。

そして会員サイト「CLASSY.Plus」で好調なのが、働くアラサー女子たちの自分磨きを応援する学び舎「CLASSY.College」
2021年8月にオンラインで始まった「ライター養成講座」は、自己投資を惜しまない「CLASSY.」ファンの心をつかみ、今では第5期まで開講するほどの人気コンテンツになりました。受講をきっかけにライターデビューする卒業生も増えています。

紙でもウェブでも「CLASSY.」というブランドを確立し、ファンを巻き込んで成長を続ける秘訣はどこにあるのでしょうか。事業部長を務める原さやかさんにお話を伺いました。

原さやか(はら さやか)
株式会社光文社 「CLASSY.」事業部長 兼 統括編集長

大学時代から光文社の雑誌「JJ」で学生ライターとして編集に参加し、卒業後の2003年に光文社に入社。2012年、光文社最年少で「JJ」初の女性編集長に就任。
編集長を約8年間務めたのち、光文社初の女性月刊誌ウェブ専任部署「CLASSY.ウェブ編集室」を立ち上げ、同編集室長に。2021年より「CLASSY.事業部」の部長兼統括編集長として、本誌とデジタル両方を統括。

【会員サイト「CLASSY.Plus」】https://member.classy-online.jp
【公式サイト「CLASSY.ONLINE」】https://classy-online.jp
【CLASSY.公式Instagram】https://www.instagram.com/classy_mag_insta
【CLASSY.公式Twitter】https://twitter.com/classy_online
【CLASSY.公式TikTok】https://www.tiktok.com/@classymagazine

聞き手:株式会社コンテンツデータマーケティング(CDM) 鶴田


ファンのイメージは「自己投資女子」で「ウェルビー女子」

– ご経歴を見ると、女性ファッション誌一筋の、まさにベテラン編集者という感じですね。

原さん:
入社から20年、学生ライター時代も入れると24年、ずっと女性ファッション誌に携わってきました。
90年代の終わりから今までは、ウェブのメディアが急成長する激動の時代でした。2007年のiPhone登場をきっかけに、どんどん情報がスマホに集約されていきましたよね。紙の良さもウェブの面白さも知っているのは自分ならではのキャリアかなと思います。

– 原さんが考える「CLASSY.」とはどんなメディアですか?

原さん:
働くアラサー世代がメインターゲットの、「自己投資女子の今と未来のために」をコンセプトに情報発信するメディアです。
価値観が多様化している今、どんな仕事を選ぶか、結婚するかどうかなど、人生の選択肢がいろいろあるからこそ迷ってしまいますよね。女性にとっての過渡期の入口に立つ世代に向けて、未来につながる提案をし続けています。

物を選んで買うのもそうですが、自己投資というのは人生が変わるきっかけです。
10年後も美しく幸せでいるためのアイテム、美容や生活のヒントを、わかりやすく丁寧なビジュアルで伝えるよう心がけています。

– ファンの皆さんはどんな人たちを想定していますか?

原さん:
「自己投資女子」と並んでもう一つ、「ウェルビー女子」をキーワードにしています。
「ウェルビーイング」は、ただ体が健康なだけではなくて、社会的・精神的にも満たされた幸福な状態のことです。「ウェルビー女子」はまさにそれで、相手を幸せにすることで自分もハッピーになる人。
しっかり働いておひとり様もできるくらい自立しているけれど、いつも自然と周りに人がいて、休日は家族や友達やパートナーと過ごすような人をイメージしています。

具体的に言うなら、友達や職場などの身近なコミュニティで「いつもシーンや自分に合った服を着ている」「プレゼントのセンスがいい」なんて褒められる、マイクロインフルエンサーの役割をする人ですね。
だからファッション特集でも「この格好で電車に乗れるか?」というTPOを意識した基準で掲載コーデを選びますし、必ずパートナーや友達と楽しむ場面の写真を入れているんですよ。

– 言われてみれば確かに……!

濃いファンから濃い反応を引き出したい

– 本誌やウェブ記事に加えて、会員制のファンビジネスを始めたきっかけは何ですか?

原さん:
始まりは、現在のメインコンテンツである「ライター養成講座」の立案でした。
コロナ禍で働き方が大きく変わり、テレワークになった人は家で過ごす時間も増えて、副業やスキルアップへの注目度が上がりましたよね。そこで、自己投資に意欲的な「CLASSY.」のファン向けに、学びのある講座を始めようという話になったんです。

もともと会員ID活用を始めるタイミングについて考えてもいたので、「だったらこの講座と紐づけていけば濃いファンのデータが取れるのでは」と思いついたのが、現在の形のベースになりました。

– なるほど、大人の学び舎だから「CLASSY.College」なんですね。
会員サイト全体の名称を「CLASSY.Plus」に決めたのはなぜでしょうか。

原さん:
わかりやすさですね。紙と別物にはしたくなくて、あくまでも「CLASSY.」本誌のブランドに新しいものをプラスしていく、ファンと一緒にコミュニティを作っていくという思いを込めました。
また、将来オンライン講座以外のことを始める可能性もあるので、その後の展開を限定しない名称という点も決め手になりました。

– 運営していくうえで、原さんが目指していることは何ですか?

原さん:
アラサー女子にとっての役に立つ居場所づくりとファンの皆様の可視化です。
いくつもの人生の選択を迫られているアラサー女子が迷ったり、悩んだりしたときにいつでも背中を押せるような、優しくて役に立つ情報と居場所を雑誌以外にも、デジタル上で作っていくことです。そのための一つが「CLASSY.Plus」であり、濃いコミュニティをどんどん広げていきたいと思っています。
また、その濃いファンの方々がデジタル上でも繋がることで可視化され、クライアントさんと何か一緒にできたり、広告関連の取り組みにつながっていくと考えています。

育てたいのは一緒に長くやっていける仲間

-「ライター養成講座」について詳しく教えてください。

原さん:
まず、光文社の雑誌編集部の特色として、フリーのライターさんも「編集部と一緒にブランドを作っている仲間」というチーム意識が強いんです。女性ファッション誌では「JJ→CLASSY.→VERY→STORY」と、雑誌と共にキャリアを重ねてきた、ずっと光文社育ちのライターさんがたくさんいます。
「CLASSY.」の新しいスタッフ探しはもちろん、広い視野ではそういう人材を今後も確保するため、ライターの入口となるオンライン講座を作りたいというねらいはありました。

通常の講座は90分の講座を隔週で6回、つまり約3ヶ月かけて、記事の作り方から先輩ライターのリアルな声まで幅広く伝えています。

それが第4期まで続けられたので、2022年12月には「1DAY冬季講習」と銘打って、60分×4コマ(+放課後質問タイム)の集中講義も始めました。
こちらは「伝わる文章の書き方」をベースに、その時々のトレンドに合った題材をトッピングして開講しています。

– 本物の塾みたいですね!

原さん:
そうですね、あえて懐かしい塾っぽい言い方にしています。塾や予備校の経営のやり方も調べて真似しているんです。
たとえば集中講義のラストには次の通常講座を告知して、リピーターの方には割引させてもらって、長く受講していただく流れをつくるなどしています。
ちなみに、毎回必ず受講してくださる皆勤賞の方もいます。ありがたい限りです……。

– ファンからの反響はいかがですか?

原さん:
熱心な受講者さんばかりで、受講後にも改めて「すごくためになった」「CLASSY.をより深く知ることができた」というような感想メールをいただいています。
ライター職に興味があってスキルアップを目指す方はもちろん、単純に「CLASSY.」が好きだから、編集部と近くなりたいから受講したという方もいるのが嬉しかったです。

そして、反応をもらうことで編集部側のモチベーションが上がったのが副産物でした。
ファンが数百人集まっている場なんて普段の業務ではなかなかないこと。交流は自信にもつながりましたし、これこそがファンビジネスだなと感じています。

– 卒業生のその後はどんな様子でしょうか。

原さん:
実際にライターとして活躍する卒業生が増えてきました。デビュー後は「CLASSY.College」の告知記事にも出て、新規の受講生を呼び込む広告塔の役割を果たしてくれています。
たとえば第1期卒業生の岩本さんは、講座をきっかけに地元でのお仕事を辞めて上京し、今は二拠点生活をしながらフリーライターとして活躍中です。

脱サラでCLASSY. ライターに!? CLASSY.college卒業生にインタビューしてみたら…|CLASSY.

ジュニアライターとして副業でやっている方もいますし、人生が変わりますね。
卒業後の進路が用意されているのがこの講座の特長なので、活躍の場が途絶えないようにという点は常に考えています。

– ファンビジネスを成立させるにあたっての壁や課題は何ですか?

原さん:
編集部員にとっては、講義そのものや課題の添削が本業プラスアルファになるため、どうしても作業量と時間の負担が増えます。定例開催に持っていくまでの体制や業務バランスが一番の課題でした。

初期は「現役スタイリストが教えるコーデの組み方」「骨格アナリストが教える骨格診断」などもやりましたが、編集部内だけで完結できるライター講座をメインにして負担を減らした方が定例開催もしやすいし、「CLASSY.Collegeといえばライター講座」という主軸が定まったなと感じています。

定例開催が安定してできるようになった今、ほかのテーマを扱うなら、お金や結婚などもいいですね。学びがあって考えるきっかけになる、「CLASSY.」世代の女性の背中を押すような講座やイベントをやっていきたいです。

– それはとても楽しみですね!

会員データの分析で見えてきたファン像

-「CLASSY.Plus」では、CDMのソリューション「Uniikeyz」を導入されています。実際の活用状況について教えてください。

原さん:
現状は主に「CLASSY.College」の運営とメールマガジンの配信、会員データの分析に使用しています。ダッシュボードが見やすくて使い勝手が良いですね。
導入以前はメールアドレスしか取れていなかったことを考えると、「Uniikeyz」導入でようやくデータ活用の土台ができたところだと思っています。

– ありがとうございます。会員データの中では特にどこを重視していらっしゃいますか?

原さん:
年齢や男女比など大枠の属性を見て、求めている濃いファン層がちゃんと会員になっているかを確認しています。

実は、これには「CLASSY.ONLINE」での反省があります。
立ち上げ当時はPV至上主義時代だったので、気がつくと「キャッチーでPVは良いけれど本誌の世界観と合わない記事」が多くなり、本来のターゲットではない属性の方の比率が高くなったこともありました。

今は女性が93%で、「CLASSY.College」受講者には25歳前後のやや若い方も多いです。これからも長く「CLASSY.」を好きでいてくれる、理想の世代に届いているのが意外な嬉しいポイントでした。

– いいですね!これからと言えば、来年は「CLASSY.」本誌の創刊(1984年)からちょうど40年のメモリアルイヤーと伺いました。40周年に向けた計画はありますか?

原さん:
リアルイベントを予定しています。ビッグなプレゼント企画も考えているので、40周年をきっかけにもっと多くの方が「CLASSY.Plus」の会員になってくれたら嬉しいです!

本誌がブランドの幹なら、ウェブ記事やオンライン講座は枝

-「従来のやり方では紙の本が売れない」「これからはウェブの時代」と言われて久しいですが、出版社や編集部の一員として、現状や今後のマネタイズをどのように考えていらっしゃいますか?

原さん:
紙の本誌は「CLASSY.」ブランドの根幹として引き続き大切にしていきます。
一貫した世界観を伝えやすいのは紙。速さや拡散力、新たなファンに届くリーチの広さは圧倒的にウェブ。ブランドを発信するツールとしてはどちらも同じくらい大事です。
対立ではなく共存するものなので、紙もウェブも目的に応じて使い分ければいいだけだと考えています。

公式サイト「CLASSY.ONLINE」は、ブランドの認知を絶やさないために重要です。
連動している光文社のECサイト「kokode.jp」での販売収入など、to C(メディア掲載商品をファンに直接購入してもらう)分野も伸ばしたいところです。

そして会員サイト「CLASSY.Plus」では、会員だからこそできる「記事を読む」以外の体験、オンラインサロン事業を拡大していきたいです。

– オンラインサロンに注力する理由はなんでしょうか。

原さん:
広告主がどういうメディアを支持するのか?と考えると、「アクティブで、そのメディアを信頼しているターゲット層の人々が集まるメディア」というのが一つの答えだと思います。
オンラインサロンに会員登録してくれるファンの皆さんは、まさにその条件を満たす存在。ここの人数を増やしていくことが大切です。
「CLASSY.」で言えば、元気なアラサー女子のことなら「CLASSY.」に聞いてください!という存在になることが重要だと考えています。

今、「CLASSY.ONLINE」でもスマホユーザーを意識した縦画面のライブコマース動画を載せたり、読者モデルやTikTokインフルエンサーをマネジメントしたり、未来に向けて種を蒔いている状況です。
でも、いくら枝葉を増やしても、幹がしっかりしていなくて何の樹だか分からないようでは人は集まりません。逆に、幹が太すぎて枝が頼りなくても、今度は誰にも届きません。
総合的なブランド力がとにかく大事だなと思います。

– 確かに、「CLASSY.」がやってるから見てみよう!「CLASSY.」の企画なら信頼できる!と感じてもらえるブランド力は大きな強みですね。

原さん:
そうですね。情報が多くて迷ってしまう時代だからこそ、相反するものを組み合わせて、40年やってきた老舗雑誌ブランドの強さをデジタルでも生かしていきたいです。

– 頼もしいお言葉です! 私も迷えるアラサー女子なので、これから一層「CLASSY.」を読み込んで人生の指針にしていきたいと思います。貴重なお話をありがとうございました。

INFORMATION

発売中のCLASSY.8月号は 俳優・山崎紘菜さんが初表紙に!「知りたい、素顔の山崎紘菜。」
俳優業の傍ら、CLASSY.モデルとして毎月誌面で活躍している山崎紘菜さん。 アツい仕事観、愛猫との癒しの時間…見た目も中身も強くてカッコいい、そして可愛い彼女の素顔をお届けします。
他にも、「令和のいい男」人気俳優・赤楚衛二さん、Aぇ! groupの佐野晶哉くんがCLASSY.初登場!

ファッション特集は【オシャレな人は色を着ない夏!】
久しぶりに予定がいっぱいで着る服に迷ってしまう人が多いこの夏。 張り切ってピンクやイエローを身にまとって出かけたら、「あれ? オシャレな友人はみんなベーシックカラーを着ていた」なんて経験はありませんか?
4年ぶりに大手を振って楽しめるからと言って、派手すぎるカラーは張り切りすぎていて、 気分じゃないのが今日この頃。
ベーシックカラーだけで、 華やかさや楽しさを表現するのがCLASSY.流コーディネートの王道です。