2023.07.21
マーケティング

読者の本当の幸せとは?ハッピーを届け続ける「Mart」

「Mart」と聞いて思い浮かぶのは、忙しい毎日を笑顔で乗り切る明るく元気なママ。
今年で創刊19年目を迎える生活情報誌「Mart」は、家族がハッピーに日常を過ごすために役立つ情報を発信し続けています。

IKEAやコストコ、食べるラー油など、取り上げられたショップや商品が次々とヒットすることでも有名。昨年スタートした会員サイト「Martストア」でも、パンやホットプレート、カジュアルウェアなど、目利きの編集部スタッフがセレクトしたスペシャルなアイテムを販売中です。

主婦層を中心とするコミュニティを大事にして、リアルなコミュニケーションでニーズを汲み取り、“一緒に雑誌をつくっている”という気持ちで読者に寄り添う
そんな「Mart」が長きにわたってファンから高い支持を集め続ける秘訣とは?
小松編集長にお話を伺いました。


小松 伸司(こまつ しんじ)
株式会社光文社 メディアビジネス局 マート事業部 事業部長 / 編集長
1999年に光文社入社。「FLASH」「女性自身」編集部に配属。「女性自身」の別冊として発刊された「Mart」のパイロット版に携わり、2004年の「Mart」編集部立ち上げから参加。2018年に1年ほど「女性自身」に戻った後、2019年より現職。

【会員サイト「Martストア」】https://member.mart-magazine.com/
【公式サイト「Mart Web」】https://mart-magazine.com/
【Mart公式Facebook】https://www.facebook.com/mart.magazine
【Mart編集部Instagram】https://www.instagram.com/mart.magazine/
【Mart編集部Twitter】https://twitter.com/mart_kobunsha

聞き手:株式会社コンテンツデータマーケティング(CDM) 轟


ときめく週末を過ごすためのヒント

– 「Mart」のパイロット版の発刊から携わられているんですね。
「女性自身」の別冊から始まったということですが、どんな雑誌だったのですか?

小松さん:
私が最初に「女性自身」に配属された頃、「ビーズ・ニュース」という当時流行したビーズの作り方・つけこなし方を紹介したムック本がありました。これがシリーズ累計200万部の大ヒットを記録したことから、「ビーズ以外の主婦の関心事ってないんだろうか?」という問いのもと、生活周りのいろんなことをテーマにした雑誌を作ってみようということで「Mart」の前身が誕生しました。
「Mart」のパイロット版は2号ほど出し、正直売れ行きはそこまで芳しくなかったのですが(笑)、続けてやってみよう!となり、雑誌「Mart」が誕生しました。

-「Mart」はどんなメディアだとお考えですか?

小松さん:
今年で誕生から19年目を迎えますが、昨年月刊から季刊に変わったタイミングで大きくリブランディングしました。
現「Mart」は、ときめく週末のヒントを提供するメディアです。 今までは割と平日寄りの家事などを紹介していましたが、ターゲットは大きく変えずに、発信する情報をA面からB面にシフトさせた感覚です。

読者にとっての本当の幸せとは?

-ここ数年のコロナは、「Mart」読者の生活にもいろいろな影響を与えたと思います。
編集長としてコロナ禍をどのように感じられましたか?また、コロナによって変化は生まれましたか?

小松さん:
編集長に就任して早々にコロナ禍になり、今までと同じやり方が難しくなってしまい、コンテンツ作りも手探りでした。
その中でもマスクの型紙の付録や、子供の小学校の休校期間中のご飯や、子育てのヒントになる情報の発信は反響が大きかったです。

緊急事態宣言が発令されていた頃行ったアンケート調査では、外出できないストレスや家事の負担が増えるといったネガティブな意見が聞かれるかと思いきや、意外と「子供と一緒に過ごせる時間は短いからこの時間を大事にしている」などポジティブな声が多かったのが印象的でした。

その後コロナ禍が落ち着いて日常が戻り、感染症対策をしながら通常の生活を送るという、今まで以上に大変な状況になると、「あの時の気持ちを忘れてはいないけど、なかなか取り戻せない」状態になっていきました。

「Mart」でも、更に忙しくなったママ達のために、ワンプレートご飯、時短料理、100均グッズでの収納術など、日々の生活を楽にするためのコンテンツを発信してきましたが、一方で、これで無理やり家事をまわせた先に一体何があるんだろう?という疑問が生まれました。
本当に読者に幸せを届けられているのだろうか?と。

季刊化されるタイミングも重なり、「3ヶ月に1回発行する雑誌で今までのように日常に寄り添う内容にはそもそも無理がある。せっかくなので、今までとは違う新しく豊かな気持ちで3ヶ月に1回「Mart」を読んでほしい。」という思いから、忙しい平日とのバランスが取れるような心身ともに充実した週末、家族と一緒に過ごすことの大切さ、お受験や勉強ではない体験型の教育を発信するほうへシフトしました。

日本の家族の意識を変えていく

-「Mart」のファンをどんなペルソナと捉えていますか?

小松さん:
基本的には家事・育児・仕事の三重タスクを背負う小学生のお子さんをお持ちのママ。仕事を持ってらっしゃる方がほとんどです。
忙しいけれど、できる範囲で家事も積極的に分担してくれるパパがいて、夫婦である程度価値観も共有できている。いつも家族がベースにあって、ワンチームと思える家族関係を築けている方です。

読者からの話を聞いてよく思うのは、「家事や育児をしないパパは、週末も家族からトキメかれない」ということ(笑)。私自身、充分にできているとは言えませんが(笑)、週末は子供のドッジボールクラブに付き添って、毎週の成長を見るのを楽しみにしています。

以前、某結婚情報誌が読者にアンケートをとった結果、理想の家族像を象徴するメディアとして、「Mart」を挙げる声が多かったと聞きました。それくらい「Mart」にはハッピーなイメージがあると考えています。

私はネガティブな情報を伝えるのではなく、充実した週末を過ごすことでリフレッシュされて、平日も毎日ハッピーに過ごしてもらいたいです。週末を充実させることはすごく大事なこと。日本の家族は週末の過ごし方がまだまだ上手じゃないので、意識を変えていけたらいいなと思っています。

読者からの話につまらないものはない。すべてが発見

-「Mart」はファンとのつながりの強さも有名ですが、どのようにコミュニケーションを取っていらっしゃいますか?

小松さん:
光文社の伝統的な読者調査(略してドクチョウ)文化は、もちろん「Mart」にも根付いていて、プランニングの基本となっています。
今はリモートが増えましたが、かつてはお宅訪問もやっていました。

実際にご自宅に伺うと、トイレの中に小さなお気に入りの世界があるのを見つけたり、ご自身では意識していないけど編集者目線だと引っかかるものがたくさんありました。
そういうところから会話を広げて関心事を吸い上げていたので、リモートになっても、「食器や冷蔵庫の中を見せてください。」と画面越しにお願いすることもあります。

あえて無駄話や自分の身の上話をして相手との共通点を見出し、距離を縮めて話しやすくするのが私のやり方です。話が散漫にならないように、基本的には一人で参加します。同性同士では話しづらいことも、男性だからこそ聞き出せる部分もあると考えています。
「読者からの話につまらないものはないし、すべてが発見」というスタンスで臨んでいます。

– 「マーティスト」や「Mart WEEKENDER」といったアンバサダー組織も有していらっしゃいますが、選考基準や人気のある方に共通することはありますか?

小松さん:
「マーティスト」は、清潔感と親近感があって、身近だけど他者から憧れられる強みもきちんとお持ちの方にお願いしています。美容や骨格診断、収納のエキスパートの方が人気ですね。

「Mart WEEKENDER」はキャンプスタイルが素敵な方だったり、ファミリーアウトドアを楽しんでいる方。まだ発足したての組織なので、人気の傾向はこれから見えてきそうです。実は私もWEEKENDERの一員になっています(笑)。

-アンバサダーとしての小松さんのご活躍も楽しみです!

-会員サイトの「Martストア」では食品からキッチン用品、アパレルまで様々なECを展開されています。どんな商品が売れていますか?

小松さん:
ライフスタイルブランド「BRUNO」とアウトドアブランド「DOD」がコラボしたコンパクトホットプレートが大ヒットしています。「Mart」が2ブランドを引き合わせる仕掛け人として動き、昨年5月に企画がスタートし、「DOD」のSNS上でアンケートを取りながらデザインを決めていきました。まさに「ファンと一緒に作った」商品です。
数年前からお声がけをして、付録施策の実現を経て、やっと今年販売までこぎ着けられました。
忙しい日の冷凍餃子でも、ホットプレートで焼けばちょっと特別な週末ご飯になりますよね。
「Mart」の伝えたいメッセージにぴったりな商品です。

また、「週末に届くとっておきのパンセット」がコンセプトの「週末ベーカリー」も好調です。
首都圏在住の読者が多いので、直接はなかなか買いに行けない地域にあって、今まで通販をやっていない名店にこだわって出店してもらっています。
ただ美味しいだけじゃなく、見た目も映える、可愛いお店を厳選しています。

武器の定性調査を裏付ける、定量データの活用

-「Martストア」では、CDMのソリューション「Uniikeyz」を導入しています。
導入の決め手は何でしたか?

小松さん:
光文社「HERS」で先に導入しているのを見ていて、ECサービスを手軽にすぐに始められることに魅力を感じました。

-導入してよかった点・改善された点はありますか?

小松さん:
よかった点は、アンケートのデータが直感的に見られるところ。
回答結果がリアルタイムで自動的に積み上がるので集計作業に時間を取られなくなりました。
メルマガの作成も以前使っていたシステムよりとても使いやすくなり、これも時短と効率化につながっています

-会員データのどこを重要視されていますか?

小松さん:
昨年リブランディングをしたことで、やはり離脱してしまうファンもいました。20年も続けていれば読者の年齢層も変わるし、子供も巣立って行ってしまうほどの年月なので、ある意味しょうがない、前向きな変化とも捉えています。
ただその分、ターゲットとしている今の小学生ママ層がきちんと新しく入ってきてくれているか、ということを気にして見ています。

-データをこれからどのように活用していきたいですか?

小松さん:
ドクチョウに代表される定性調査を武器として今までやってきましたが、やっぱりそれには当たり外れもあります。
「Mart Web」の記事を読んでいる方、「Martストア」でお買い物されている方がどんな属性なのかを蓄積していき、定性調査での気づきを検証して裏付けできる定量データとして使っていきたいです。

-強みの読者調査と、「Uniikeyz」に蓄積されたデータを組み合わせることで、もっとファンを深掘りしていけそうですね!

「Mart」の今の価値観を正しく伝えたい

-最後に、これからの「Mart」への思いをお聞かせください。

小松さん:
ブランドが認知されているという良い点でもあるのですが、まだ世間的に昔の「Mart」のイメージが強いと感じています。

夏号から始まったばかりのアンバサダー組織”Mart WEEKENDER”のメンバーは、それぞれに発信力がある方々。「Mart=ときめく週末」と言うイメージを発信してもらい、それに共感する人、つまり今の「Mart」が本当に求めている層にきちんと入ってきてほしいです。発信している価値観がまずは正しく伝わることが大事だと思っています。

いずれは体験型のイベントも開催したいです。
グリーンのショップとコラボして植物のイロハを学べる講座とか、山登りビギナー同士でライトな登山を楽しむイベントとか、料理動画のコンテンツとか、「Mart」が提案する楽しい週末をより実感してもらえるような企画を考えています。
きちんと対価を頂いてイベントを運営し、ファンの属性を可視化して、協賛がつくようになっていけば、ビジネスとしても柱になっていくはずです。

「Mart」のメッセージを生活者に届け続けるために、いろんな種まきを絶やさず、その中で芽のあるコンテンツを育てていきたいです。

-様々なヒットを仕掛けた立役者としても知られる小松さんに、これが本当に最後の質問です!次に来るブームを教えてください!

小松さん:
「ごちそう冷食」です。冷凍食品が悪という考えはもう時代遅れ。 いろんなメーカーが参入し、「冷凍食品こそがごちそう」の時代がやってきます!

-料理が苦手な私にとって、温めるだけでごちそうが食べられるなんて朗報です! 「ごちそう冷食」を食べたら、ときめく週末を過ごせそうです(笑)。

INFORMATION

発売中の「Mart」夏号、特集テーマは「週末の冒険」です!

「Mart」夏号の特集は「夏こそ!『週末冒険』計画」です。
キャンプ、登山、ピクニックからおうちごはんまで、忘れられない思い出づくりの達人たち、名付けて「Mart WEEKENDER」の皆さんにそのコツを徹底取材しました。
また1泊2日で味わえる非日常体験セレクションや、ローカルスーパーのイチオシ食材など、週末お出かけしてみたくなる情報がもりだくさん!
人気企画「コストコ出口調査」では皆さんの“冒険買い”アイテムを取材。マンネリ打破の参考にしてください。
表紙は「Mart WEEKENDER」の一員でもある中村明花さん&サッカー元日本代表の細貝 萌さんファミリー。親子でアクティビティに挑戦してくれました。