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ニュートラルな目線でマーケティング情報を発信する、講談社「C-station」
講談社が運営するBtoBマーケティング情報サイト「C-station」。「C-station」のほか、3つの国内向けBtoBサイトに、海外向けBtoBサイトを含めて「C-station」グループとして運営されています。
ベースとなるのは「C-station」。ビジネス活用のためのマンガIP情報サイトが「マンガIPサーチ」、ビジネスパーソン向けのSDGs情報を発信しているのが「講談社SDGs」、広告主・広告会社向けの広告情報サイトに「講談社AD STATION」があります。講談社のアセットを、企業のマーケティングに取り組む方々に、課題解決の具体的なヒントとして提供することを心がけていると言います。
「C-station」グループサイトを代表して、今回はコンテンツ責任者である川崎耕司さんに「C-station」の成り立ち、目的、そして、国内向けの3つのグループサイトについてお話を伺いました。
川崎耕司(かわさきこうじ)
株式会社講談社 ライツ・メディアビジネス本部メディアプラットフォーム部 部次長 シニアエディター・コーディネーター
「C-station」コンテンツ責任者。広告会社・広告主向け情報サイト「講談社AD STATION」を主に担当している。「FRaU」「ViVi」「VOCE」などの女性メディア、「Hot-Dog PRESS」「TOKYO1週間」などの男性・情報メディアで長年、編集を担当したのち、2021年よりコミュニケーション事業第二部、2023年より現職。
「C-station」https://c.kodansha.net/
「マンガIPサーチ」https://mangaip.kodansha.co.jp/
「講談社SDGs」https://sdgs.kodansha.co.jp/
「講談社AD STATION」https://ad.kodansha.net/
聞き手:株式会社コンテンツデータマーケティング(CDM) 轟・鶴田
「C-station」は広告主と同じ目線に立とうとしています。
– まず初めに、川崎さんの「C-station」と各グループサイトへの関わり方を教えてください。
川崎さん:
2023年の6月の異動より、「C-station」と「講談社AD STATION」「講談社SDGs」「マンガIPサーチ」の4サイトの運用、コンテンツ制作、そこから派生する営業支援業務、すべてに関わっています。
特徴の違う4サイトですが、それぞれのサイトの良さを活かしつつ「C-station」グループとして一体運営をしていく、というのが自分の仕事だと思っています。
– 「C-station」が立ち上がった背景や目的を教えていただけますか。
川崎さん:
まず「講談社AD STATION」がありました。20年以上前にはあったと思います。講談社の広告情報を掲載するサイトですね。7年前の2017年に出来た、「C-station」はその発展形とみていただいていいと思います。
「講談社AD STATION」では広告主や広告会社にとってのソリューションとして広告メニュー情報を媒体営業発信で掲載しています。その昔はプリントアウトやメールなどでお届けしていた資料を、直接ダウンロードいただけるようになったわけですね。いまも変わらず、広告主や広告会社にとって有益となるような最新情報をアップし続けています。
「講談社AD STATION」が出版社、広告主、広告会社にとって必要なことは論を俟たないのですが、「C-station」は講談社発信の情報伝達だけではなく、広告主と同じ目線で取材した記事を掲載する意図で、運営しているつもりなんです。そうすることで、こちらからの「押し付け」などではないコニュニケーションができ、広告主目線のお問い合わせだったり、課題解決の相談が来るかもしれない…そんな理念でスタートしたと聞いています。自分もその理念はもちろん引き継いでいます。
そんな姿勢も影響しているのか、「C-station」グループでは年々、以前はお付き合いがそう多くなかった官公庁、地方自治体からの直接のお問い合わせが増えているんです。またいろんなセミナーやセッションに「C-station」メンバーがスピーカーとしてお招きいただくことも多くなっています。広告主や広告会社、他のマーケターの方々と同じような目線で、講談社が持っているバリューを話せる人たちだという理解があると感じています。
そういった意味で、「講談社AD STATION」の役割はそのまま、別の入口として「C-station」を立ち上げたことは、チャレンジかつ有益なことだったのかなと思っています。
– 「広告主と同じ目線」とは具体的にはどんなものでしょうか?
川崎さん:
具体的な記事でご説明するのがいいでしょうか。例えば、「鹿島アントラーズ」と「ViVi」のコラボ事例を紹介した記事をご覧いただけますか。
フットボールクラブ「鹿島アントラーズ」が若年層の女性にアピールするため、弊社「ViVi」とコラボしていただいています。
この記事では、「ViVi」の編集部=メディア企業の側の視点でなく、すべてを広告主さま=「鹿島アントラーズ」の広報ご担当の目線で話していただくことで、構成しています。
記事としては、どちら側から書かれた記事も同じような話になるかもしれませんが、コラボ施策の「ViVi」からのアピール記事ではなく、広告主さま目線の課題解決記事としてお伝えしたかったのです。そんな目線はもしかしたら、他のスポーツクラブの方たちにも読んでいただけることに繋がるかもしれない、と。
記事と同時に、この事例のホワイトペーパー資料も作りました。ホワイトペーパーは、ダウンロードして長く手元に残していただけます。
すぐには問い合わせに繋がらなくても、「ViVi」というメディアの持つスキルや課題解決力は続いていくものなので、ニュートラルな事実をマーケターの皆さんに提示し、何かヒントを感じていただければ嬉しいな、思います。
遠回りなやり方に見えるかもしれませんが、目線を広告主さま側にすることによって、ヒントにしていただきやすいアプローチなのではないか、と思っています。
「C-station」はさまざまな広告主、マーケターの皆さんのインタビューも載っているニュートラルな場です。この記事の例だけでなく、講談社外の方にもお話していただきやすいのかなと日々実感もします。
各部署が連動して一緒にソリューションを作れる関係性
– 「C-station」グループ全体として、昨今どのようなお悩みや課題を持つクライアント様が多いと思われますか?
川崎さん:
課題は本当にいろいろお持ちだと思うので、お答えは難しいです。
ただグループ全体として、特に「マンガIPサーチ」「講談社SDGs」へのお問い合わせでは、「施策はまだ決まってないけどまず話を聞きたい。」といったところからスタートいただくことも増えています。
また、直接のお問い合わせが増えているのは、「C-station」の理念がグループ全体に浸透していることの表れだと感じています。
– 様々なお問い合わせに対して、「講談社」だから提供できる価値はどんなところにあるとお考えですか?
川崎さん:
講談社はいわゆる広告営業(=プロデューサー)、ライツ担当者と、編集の関係性が近く、一体になっている、と社外の方からもよく言われます。一緒にソリューションを作れる関係がすでにあると思います。
また、出版メディアは日頃から、動画、SNS、イベントなどさまざまな展開をしているので、エディトリアルのメソッドで各種対応が可能なのも強みではないでしょうか。
マンガIPを通じての、新しいヒント
– グループサイト「マンガIPサーチ」「講談社SDGs」はどのような流れで立ち上がったのでしょうか?
川崎さん:
元々は「C-station」内で、マンガIPやSDGsのテーマを取り上げていましたが、両ジャンルとも伸びている分野であり、お問合せも多かったのが理由のひとつです。また実は、それぞれ微妙に問い合わせいただけるお客様が違う傾向というのもあったとは思います。そうして、「C-station」からスピンオフして、2021年に「講談社SDGs」が、2022年に「マンガIPサーチ」が立ち上がりました。
– 「マンガIPサーチ」「講談社SDGs」に寄せられるお問い合わせの特徴というのはどのようなことでしょうか?
川崎さん:
「マンガIPサーチ」には、官公庁や地方自治体関連のコラボ事例が多数掲載されています。それに比例して、官公庁関連のお問い合わせも増えています。
最近のコラボでは「佐賀県副知事 島耕作」も話題になりました。
サイトにはコラボ事例をなるべく多く掲載するようにしていますので、広告や宣伝の必ずしもプロフェッショナルではない方々にも、新しい施策のヒントをご提案できているのではないかと感じます。もちろん「マンガ」というもの自体の強さもありますが。
連載が始まって1年くらいの新しい作品にもピンポイントでお問い合わせが来ることも印象的です。
「まだどこもこの作品を使っていないから使いたい」ということもあると思いますが、それがわかるのは「どこがなにを使っているか」ということを把握されているから。
自らアンテナを張っている、感度や情報の精度が高い方たちからのお問い合わせが多いと感じていますし、それを受け止めていきたいと思っています。
BtoBのSDGsサイトとしての役割
– 「講談社SDGs」は、社会的に関心が非常に高くなっているテーマである「SDGs」を扱うサイトですが、現在どのようにメディアづくりに取り組んでいらっしゃいますか?
川崎さん:
講談社には「FRaU」というSDGsが得意なメディアがあり、「講談社SDGs」も「FRaU」と近しい関係ですので、連携もしながら運営しています。
その一例がセブン&アイ・ホールディングス サステナビリティ推進部の小野さんと「FRaU」関編集長の記事です。
– FRaU編集長とセブン&アイのサステナビリティ推進室の方のタイアップ作りの歴史、特に社内外への「伝え方」に対する思いが印象的でした。
川崎さん:
「FRaU」の考え方を、「講談社SDGs」というニュートラルな立場のメディアの記事で紹介することで「FRaU」をもっと幅広く知ってもらうきっかけにもなると思っています。
セブン&アイ・ホールディングス 小野さんの記事にもありますが、多くの企業のSDGs担当者は、やるべきことだからと手探りで始めて、でも成果が見えづらく、社内の理解を得ていくのが難しい、と感じている方も多いようです。他の企業はどう取り組んでいるのか?ということを皆さん知りたいはずです。
そういう意味で、BtoBのSDGsサイトとして講談社に関係あるなしに関わらず、これからも企業目線での記事を発信していければと思います。
– 「講談社SDGs」で今後特に注力されたい内容はありますか?
川崎さん:
SDGsの中の一つではありますが、今「DEI」(「Diversity(多様性)」「Equity(公平性)」「Inclusion(包括性)」の頭文字を取った言葉。)が重要視されています。
この「DEI」は今、企業において誰が担当しているかというと、人事部とか総務部の方々です。SDGsも最初は社長室などから始まって、サステナビリティ推進室が生まれたのは、この数年でした。それと同じように「DEI」も企業内で急速に発展してきています。
BtoBのSDGsサイトとして、「講談社SDGs」でもこの分野は避けて通れません。非常に難しい分野なので、明確な答えが出せるものではないですが、BtoBのマーケターや「DEI」の担当者の方にとって何かの問いかけになる記事をお届けしていきたいです。
「講談社SDGs」ではこの分野についての本も出されている羽生祥子さんの記事を既に公開していますが、シリーズ化もしていく予定です。
遠回りなアプローチでも、絶対に“あったほうがいい”場
– 最後に、川崎さんの思う「C-station」の今後について教えてください。
川崎さん:
講談社では「C-station」グループも、事務局の一員となって年に一回「講談社メディアカンファレンス」という催しを開催しています。(2023年回特設サイト)
「読者が選ぶ・講談社広告賞」が発展し、「講談社メディアカンファレンス」になったのが2019年。優れた広告企画にアワード授与するだけでなく、「ミライトーク」という有識者を交えたセミナーなどのプログラムもあります。
また、この会には多くの広告主にご来場いただくので、講談社の編集や営業一同が、広告主や広告会社の皆さまに直接繋がれる場所なんです。
私は現部署に来て、昨年初めてこの「講談社メディアカンファレンス」の事務局スタッフを経験しました。
その時に「『C-station』がほんとうに解った」と感じました。「この『講談社メディアカンファレンス』というリアルで素敵な交流の場を、『C-station』のサイト上で表現したい」と思いました。
広告主と直接会って、同じ目線で意見交換をし、そしてさらに講談社のバリューもお伝えする。あのリアルな場で見えた可能性を「C-station」グループが体現すれば良いんだと思ったんです。
「講談社メディアカンファレンス」の意義は社内外で既に知られていると思いますが、「C-station」はまだまだそこには至っていないと思っています。
「講談社メディアカンファレンス」が数ヶ月準備して、1日の印象に残る広告主との関係性をつくれるように、「C-station」もアプローチは遠回りかもしれないけど、「講談社メディアカンファレンス」と同じように、 “あったほうがいい”場でありたいと思うんです。
「C-station」も、社内外からある程度認知はされてますが、知ってはもらっているけど、じゃあどう講談社内でもっと活用してもらうの?とか、社外からも活用してもらうためには?とか、もう少しやれることはあるなと考えています。
メルマガ会員など、既に「C-station」を活用いただいている方々とより繋がりつつ、どうやってもっと濃い関係性を作っていくかがこれからの課題だと思っています。
インタビューの最初に「『C-station』グループサイト、少しわかりにくいでしょう?」と川崎さん。「BtoBっていうのは見えにくいし、わかりにくいから。」というお考えのもと、丁寧に言葉を選んでお話してくださいました。
グループサイトではそれぞれの分野を扱いつつ、「C-station」というニュートラルなサイトを設けることで、グループサイトをまとめ、横で連携し、それぞれの良さを客観的に引き出す、という運営の意図と目的がよく理解できました。
「広告主と同じ目線を持つ」ということは、言葉では簡単でも実行するのは大変なこと。 BtoB企業であるCDMの一員として、私たちもニュートラルな視点を持って、押し付けではなく、クライアント様のビジネスやお悩みに寄り添って、信頼をいただける存在でありたいと感じています。