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世代を越えて遊ぶ! はやみねかおる公式ファンクラブ「赤い夢学園」
「はやみねかおる」といえば、『名探偵夢水清志郎』など数々の人気シリーズを世に送り出してきた児童文学作家。最近では『都会(まち)のトム&ソーヤ』の実写化や『怪盗クイーン』のアニメ映画化も話題になりました。作家生活は今年で35年目を迎え、現役小中学生から大人になったかつての少年少女たちまで、幅広い年齢層のファンに愛読されています。
そんなはやみね先生の公式ファンクラブ「赤い夢学園」が、講談社・児童図書出版部から2024年秋に誕生しました。
CDMが提供するUniikey Experience Cloud のペイウォール機能(*)を活用した、初のサブスクリプションサービスとして運営されています。
*自社メディアサイト上で読者にコンテンツを直接販売できるしくみのこと
はやみね作品の一覧やキャラクター図鑑など、無料で閲覧できる範囲だけでも大充実のサイトですが、サブスクに加入もとい「入学」すると、はやみね先生やファンとの交流、電子書籍のためし読みなどが可能に。サブスクには「ベーシック」と「プレミアム」の2プランがあり、プレミアム会員にはここでしか手に入らない特典グッズやイベント優待が追加されます。
運営事務局の塩見亮さん、大矢真史さんにお話を伺いました。
塩見亮(しおみりょう) ※写真左
株式会社講談社 第三事業本部 児童図書出版部長 兼 「コクリコ」編集長
2000年講談社入社。絵本、童話の編集部を経て、2018年より「げんき」編集長、2023年6月より「コクリコ」編集長。「赤い夢学園」では”理事長”を務める。好きなはやみね作品は『都会のトム&ソーヤ』シリーズ。
大矢真史(おおやまさし) ※写真右
株式会社講談社 第三事業本部 児童図書出版部 講談社コクリコ 副部長
2005年講談社入社。「週刊現代」・「FRIDAY」の編集部を経て、2009年3月より広告営業を担当。2021年6月より現「コクリコ」事業チームの前身に担当副部長として異動し、 2023年6月より「コクリコ」事業チームの副部長を務める。好きなはやみね作品は『怪盗道化師(ピエロ)』。
はやみねかおる公式ファンクラブ「赤い夢学園」https://cocreco.kodansha.co.jp/akaiyume
はやみねかおる講談社公式X https://x.com/hayaminekaoru30
【無料会員サイト「講談社コクリコCLUB」】https://cocreco.kodansha.co.jp/information/
【情報サイト「コクリコ」】https://cocreco.kodansha.co.jp/cocreco
【コクリコ公式X】https://twitter.com/cocrecoOfficial
【コクリコ公式Instagram】https://www.instagram.com/cocreco_official/
【コクリコ公式YouTube】https://www.youtube.com/@cocrecoOfficial
聞き手:株式会社コンテンツデータマーケティング(CDM) 藤平・轟・鶴田
子どもから大人まで、35年分の熱いファンがいるから作れたファンクラブ
まずは、はやみね先生のファンクラブが生まれたきっかけを教えてください。
大矢さん:新刊が出たときのサイン会、クイズ大会、直近では映像化作品の関連イベントなどがどれも盛況で、はやみね先生に熱心かつ幅広い年齢層のファンがいるのはわかっていました。一方で、そういう単発のイベントや年に2〜3回出る新刊の本以外、ファンとのタッチポイントは多くありません。
継続的なタッチポイントを作り、ファンと直接つながる「ファンクラブ」というあり方をやってみようと、『都会のトム&ソーヤ』シリーズを担当していた塩見が発案者となって動き始めたのがちょうど一年前です。
塩見さん:サイン会をやると20代女性が中心で、先生を前に涙ぐんで話せないような熱い方が多いこと。講談社の採用面接で「愛読書ははやみねかおる作品です」と目をキラキラさせて言う志望者の方が毎年いること。そんな状況を見ていたので、児童書の作家でも「ファンクラブ」ができるのではないかと考えました。
大矢さん:作家さんやそのマネジメント事務所が運営している例はいくつか拝見したものの、「作品を刊行してきた出版社が、作家のファンクラブを立ち上げる」という例は見当たらず、少なくとも児童文学作家では初だと思いますね。レーベル単位でなら、講談社でも「青い鳥サポーターズ」や「メフィストリーダーズクラブ」などはありましたが、前例のない取り組みだったので手探りの状態で始まりました。
前例がない中で、先生の反応はいかがでしたか?
塩見さん:「ファンクラブ」なんて、そんな……という感じではありましたが、強くやりたいと思っていることを伝えると、受け入れてくれました。
大矢さん:1990年のデビュー作『怪盗奇術師』含め、講談社メインでたくさんの本を出させていただいた積み重ねや、先生との信頼関係が土台になっているというのはありますね。複数の出版社で等分に分かれているような形だと難しかったかもしれません。
設立にあたって意識された点はありますか?
塩見さん:気をつけたのは、子どもファンを置き去りにしないことです。「赤い夢学園」はあくまでも無料で楽しめるファンサイトである、という部分がいちばん大事だと思っています。
大矢さん:まずはちょっとサイトを見て帰っていくだけでもいいんですよ。「学園名簿(キャラクター図鑑)」や「図書室(作品リスト)」など、まだお金が払えない小中学生の読者でも楽しめる内容をたくさん用意しました。はやみね先生が「図書室」のために一作一作書き下ろしてくれたコメントだけで合計40,000字ほどあるんです。
それだけで本が一冊出せそうですね!
▲「校長からひとこと」コメント。その下の「制作エピソード」は有料会員になってのお楽しみ
何歳でも、何度でも「赤い夢」の世界へ遊びに来てほしい
ファンクラブをより楽しむための提案として、月額550円の「ベーシック」と年額11,000円の「プレミアム」の有料プランが用意されています。
大矢さん:先行事例が少ないから価格設定も難しくて。提供したいサービスに見合っていて、たくさんの人が入学してくれる価格とは?を一から考えていきました。
塩見さん:有料会員のメインターゲット層は、20~30代女性を中心とした、はやみね作品を長く愛してくれているコアファンです。
大矢さん:大人になっているから自由に使えるお金も多いですし。とはいえ児童文学作家なので、「大人だけが楽しいファンクラブ」にはしたくないという視点もありました。そこは先生からも要望があった部分です。なので、小中学生でも保護者の方にお願いしたら無理なく続けてもらえるのが月額550円(ベーシックプラン)かなと。
年額のほうは11,000円(プレミアムプラン)です。「年額は先にまとめて払ってくれるのだから、550円×12ヶ月の6,600円より安くするべき」という考え方もありますが、ファンがざっくり2層に分かれることを前提に、「余裕がある大人の方にはしっかり支えていただいて、それに見合うグッズなどのサービスを乗せる」という価格設定にしました。
蓋を開けてみると、700人ほどのうち9割弱くらいの人がプレミアムで申し込んでくれているので、一旦はそんなに間違っていなかったのかなと思います。
SNSでも「入学した」「赤い夢の住人になれた」といった投稿が多数あって、ただ「はやみねかおるファンクラブに入会した」と言うのとは一段違う盛り上がりを感じました。「赤い夢学園」という名前の由来についてお聞かせいただけますか?
塩見さん:「赤い夢」は、はやみね先生の作品全体を表すテーマとして知られているので、これはすんなり決まりました。
大矢さん:作品世界を表す象徴的な造語です。江戸川乱歩など、はやみね先生が子どものころ夢中になって読んだであろう、怪人や名探偵や怪盗が出てきたりするような、子ども心に恐ろしくもあるけれど魅了される世界のことを「赤い夢」と呼んでいるんだと思います。
塩見さん:「学園」にしたのは、主人公の多くが学生で作品の舞台にも学校が多いのと、はやみね先生自身が昔学校の先生をされていたことも大きかったと思います。
大矢さん:こちらも自然に決まりました。学園なのか学院なのかという議論はありましたが(笑)。モチーフが決まった瞬間から、はやみね先生は校長だよね、ロゴは校章風にしよう、会員証もプラスチック製のしっかりした学生証を作ろう、と一気に具体的なアイデアが定まっていった感があります。
▲しおりには校訓「遊びをせんとや生まれけむ」の文字も
プレミアム会員特典のグッズをお持ちいただきましたが、どれも魅力的ですね。
塩見さん:「入学許可証」は1枚ずつ先生の直筆サイン入りです。さらに手作りのしおりを先生の方から送ってくれたりと、とても協力的で感謝しています。
大矢さん:プレミアムのほうが年間4,000円ほど高くなるわけですが、これらのグッズやイベント優待があるならむしろお得だと納得していただけたのかなと。また、SNSでも「自分たち大人がお金を払ってサービスを継続させることで、はやみね作品の魅力を若い世代に受け継ぐお手伝いがしたい」といった書き込みが数多くありました。
正直なところ、やっぱり紙の本は低迷中という現状があって、はやみね作品といえども初版部数や実売部数は減ってきています。しかし、これは決して作品が受け入れられなくなってきている、ということではなくて、私たちが適切な届け方ができていないということだと思うんです。
ためし読みとは別に「課題図書」という有料会員なら毎月1冊まるごと電子で読めるコーナーを設けたのも、まだ読んでいない方だけでなく、「昔読んだけど読み返したい」「実家にはあるけど今は手元にない」という方に再びはやみね作品世界を楽しむ機会を作っていきたいというねらいがあります。
児童書って図書室で借りて読む人がたくさんいるので、売れた部数以上に、実際に読んだことがある人や好きな人がすごく多いはずなんですね。その積み重ねが35年分。ダ・ヴィンチWebで出してもらった記事も、「もう一度はやみね作品世界へ」というテーマで、大人ファン向けに大人ファン視点で書いていただいています。
お二人が考える、世代を越えて読み続けられるはやみね作品の魅力は?
塩見さん:これは才能と言うしかないと思います。けっこう、オヤジギャグとか、若い人が絶対知らないようなネタをあえて使っているにもかかわらず、人気が一向に衰えないのは不思議です。表面的なことよりも、どうしたら読者の子どもに楽しんでもらえるか、つねに妥協なく考えていらっしゃるのだと思います。
大矢さん:図書室に置かれていることで、シリーズがあるから本好きな子たちが次々読める、友達と話題にしやすいというのも大きい気がします。
「はやみね校長」と「生徒」がともに楽しむ学園生活
改めてサイト全体を見渡してみると、本物の学校のように「名簿」や「〇〇室」があってわくわくします。
大矢さん:「学園名簿(キャラクター図鑑)」は現在278名で、各シリーズの最新刊などはこれからなのでもっと増えます。講談社の資産を活かして『はやみねかおる公式ファンブック 赤い夢の館へ、ようこそ。』の原稿からデータを引っ張ってきました。手作業の部分もあり大変でしたが、一人ひとり「このキャラクターが登場する書籍」まで網羅した力作です。さらに完成度を高めるべく、ファンの方にも情報提供を求めて、随時反映しています。
やはり、ファンが参加するという要素は大切ですか。
大矢さん:イベントでもよく呼びかけているのは、「赤い夢学園」は事務局と生徒のみなさんで作り上げるものだから、ご意見やご指摘はどしどしお寄せくださいということです。
ファンの方から見ても、情報を確かめる面白さ、なにか指摘したら公式に反映されるかもしれない面白さがあると思うので、いい意味でゆるくお力を借りながらやっています。これはネットの良さでもありますよね。紙と違って、公開した後も情報のブラッシュアップができますから。
「購買部(オンラインストア)」も楽しみです。
大矢さん:先ほどお見せしたプレミアム特典グッズとは別に、オリジナルグッズの販売を予定していますが、そちらはまだ商品開発中です。
現在は先に、100冊限定サイン本の抽選販売を始めています。10月に応募受付をした『そして五人がいなくなる』は、『名探偵夢水清志郎』シリーズの第一巻(1994年発刊)なんですよ。新刊のサイン本は発売イベントなどで手に入りやすいですが、過去の作品のサイン本というのはなかなか機会を作れないので。
思い出の一冊にサインを入れてもらうことができますね。
大矢さん:そうですね。あとは「せっかく一巻を買ったから二巻以降も揃えよう」と思ってもらえたらいいな、という密かな願いもあります(笑)。11月は『怪盗クイーン』シリーズ、12月は『都会のトム&ソーヤ』シリーズからサイン入り第一巻を販売予定です。
▲「入学式」で画面越しに名前を呼ぶはやみね校長
開校直前の9月4日には「学校説明会」、そして10月2日には有料会員限定の「入学式」がオンラインで行われました。
大矢さん:「学校説明会」は申込が1,000人超えで、リアルタイム参加が700人くらい。うち465人が会員になってくれたそうで、申込したうち4割強の人は入学してくれたということになります。説明会でこれからやることを発表した時のリアクションもすごくポジティブなものばかりだったので、こちらも嬉しくてやる気が出ました。
塩見さん:どちらも予想を大きく上回る人数が参加してくれました。チャット欄もものすごい勢いで、説明会では9,000件くらいあったそうです。コメントを拾うのも一苦労でした。「入学式」では、はやみね校長が名前を読み上げて、呼ばれたらZoomの挙手ボタンを押す。それだけのことなのですが、意外と感動的なイベントでした。
大矢さん:コメントでは今後やりたいことを聞いたりしたんですけど、やっぱり部活ですよね。校歌を作ろうとか、文芸誌を作ろうとか。はやみね作品の中には「文芸部」が登場する作品がたくさんあるんですよ。作品世界にあるものを現実にしたいという声は多いですね。コミュニティを運営する人が必要ですぐには実現できないのですが、是非やりたいなと思っています。
塩見さん:みなさん優秀で、いろんな特技を持っている方がいるので、「部活動」のような形で、会員がどんどん率先して活動できるようなファンクラブになればと思っています。
大矢さん:あとは個人的にですが、説明会に参加したものの未入学の6割の方、声が聞こえてこない人たちも大事だなと思っていて。SNSで発信するのは「赤い夢学園」が好きな人たちばかりだからこそ、好意的な反応だけじゃなくて、なぜ入らなかったのか、UECの力を借りて理由をつかんでいきたいです。そこにまたチャンスがあるはずなので。
公式アカウントも、会員に向けた情報発信はもちろんですが、何万人ものはやみね読者には「赤い夢学園」をまだ知らない人や迷っている人たちも絶対いるはずなので、そういう人たちも意識しながら運用しています。
オンラインイベントには、はやみね校長先生も出演されていましたね。
塩見さん:とても張り切ってくれています。10月2日の「入学式」では、手作りでそれっぽい背景を用意してくれました。Zoomの背景に設定するのではなく、実際に背後にモニターを置いて映されていたのが面白かったです。
大矢さん:すごくサービス精神が旺盛な作家さんです。「入学式」では背景だけでなく、学園ロゴ入りのネクタイピンやヘッドホンまで作って臨んでくださいました。生徒の名前も一人ずつ呼んでもらったり、1,000枚近い入学許可証にサインも書いてもらったりしています。
塩見さん:「はやみね先生、そんなにたくさんサインして大丈夫?」とか、先生や私たち運営側の心配をしてくれる方もいて、なんてあたたかいファンの方々だろうと感動してしまいます。
大矢さん:「校長室(はやみね先生とファンが交流できる掲示板)」にもたくさん書き込みがあります。一方で、先生と直接交流するなんて畏れ多い、恥ずかしいと感じる方も一定数いらっしゃるようです。見ているだけでいい、認知されない「ファンA」でいたいという気持ちも理解しつつ、おしつけがましくなく、でもアクティブな交流が図れるファンクラブにしていきたいです。
「赤い夢学園」を、将来的にどんなコミュニティにしていきたいですか?
塩見さん:おかげさまで、オープンしてすぐに多数のコアファンは集まってくれました。次は、はやみね先生の作品が好きだったけれど今は少し離れてしまっているような、潜在的ファンに訴えかけていきたいです。
大矢さん:大人になったファンが楽しんでくれて、そのおかげで充実したファンクラブ運営を継続できて、当然その間にも先生の新作が出て、次世代のファンにも届くという、長い期間でのエコシステムのようなものを作りたいというのが一番です。
先生もまだ何年も書くとおっしゃってくださっていますし、これまでの作品資産とファンとの継続的なタッチポイントを作って、より深くはやみね作品の世界を楽しんで、好きになってもらえたらと思っています。
塩見さん:ファンクラブは、一度立ち上げたら簡単にやめるわけにはいかないと思っているので、持続可能な形で、末永いファンサービスを提供できる態勢を作っていきたいです。
お知らせ
「赤い夢学園購買部」にて、『怪盗クイーンはサーカスがお好き』のサイン本を【100冊限定】で抽選販売中!
受注期間: 11月8日(金)正午12時~11月18日(月)23時59分
https://eeo.today/store/101/products/detail/162831