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SaaS CIAMの導入ステップ:POCからロールアウトまでの期間とマイルストーン(前編)
CIAM導入を検討されている方へ

CIAM(Customer Identity and Access Management)は、顧客データの活用やデータビジネスを強化する企業にとって重要な要素です。CIAM製品は大きく分けて、「オンプレミス型」と「クラウド型(SaaS型)」があります。オンプレミス型は自社の要件に合わせて自由にカスタマイズができる一方で、サーバー管理などハードウェアの準備に高い初期費用がかかります。SaaS型はある程度パッケージ化されている製品が多く、導入の迅速さ、スケーラビリティ、コスト効率の高さが特徴です。
どのタイプを選ぶにしても、導入にあたっては自社のシステム構成や運用体制を考慮する必要があります。適切な選択をしたとしても、十分な効果を出すにはスムーズな導入と運用が欠かせません。CIAMの導入は単なるツールの実装ではなく、会社全体として戦略的に計画する必要があります。新規導入の場合は準備フェーズを入念に行い、既存システムからの移行導入の場合は移行方法の検討が重要です。
本記事ではSaaS型CIAM製品に焦点を当て、導入までに必要なステップ、フェーズを前編と後編に分けて紹介します。
SaaS CIAM導入プロセス
1.準備フェーズ(〜2か月)
2.POC(概念実証)フェーズ(1〜2か月)
3.計画・設計フェーズ(1〜3か月)
4.実装フェーズ(2〜4か月)
5.ロールアウトフェーズ(1〜3か月)
6.最適化・運用フェーズ(継続的)
前編では1-3、続く後編では4-6を紹介します。
1.準備フェーズ(〜2か月)
SaaS CIAMを導入にあたり、最初に取り組むステップが準備フェーズです。この段階では、プロジェクトの方向性と導入後のビジョンを作り上げていくことが重要です。具体的で明確な計画がなければ、実装の遅れや無駄なコスト発生につながる恐れもあります。
準備フェーズの第一歩は、実現したいことを具体化した要件定義とベンダー選定です。
まずCIAMを導入し、何を実現したいのか、どのような認証・認可の仕組みが必要なのか、現行のシステムとの統合はどのように進めるのかについて明確にしていきます。
この段階では以下の項目の検討と確認を行います。
要件定義
- 統合IDを利用して解決したい課題の整理
- 対象のサイトのシステム構成
- 各サイト周辺対向システムの数と内容
- ID基盤の持ち方
- ユーザー登録フロー
- ユーザー同意の管理と個人情報の管理方針
- 既存システムや導入予定のシステムとの連携要件
ベンダー選定
要件に基づいて最適なSaaS CIAMプロバイダーを選定します。以下の点が比較検討のポイントとしてあげられます。
- 機能
- セキュリティ認証
- 拡張性
- サポート体制
- 価格
準備段階から、社内の関係者(IT、情報システム、セキュリティ、マーケティング、法務など)を巻き込み、導入目標と期待される効果を共有することで認識のずれを防ぐことができます。
ー既存システムからの移行(リプレイス)の場合ー
既存の会員基盤からの移行の場合は、新しいシステムが本番環境でも問題なく稼働するかを確かめることも準備フェーズで検討します。事前に移行シミュレーションを実施し、想定されるリスクを洗い出すことでトラブルの未然防止に繋がります。特に、元から取得していたデータとの整合性や連携するシステムへの影響、業務フローの変化によるオペレーション上の課題などを考慮します。テスト環境で実際の移行手順の検証の仕方も計画に入れ込み、段階的な移行アプローチも含めます。
2. POC(概念実証)フェーズ(1〜2か月)
選定したSaaS CIAM製品が実際に自社の要件を満たせるかを確認するための重要なステップです。ここでの目標は、製品が提供する機能やサービスが、自社の具体的なニーズに合致しているかを実際に小規模でテストし、問題や課題を事前に見つけることです。
POCの範囲設定
POCでは検証対象の機能を絞り、効率的にテストすることで、時間とコストを節約します。全機能を検証する必要はなく、以下のような重要機能に絞ることが効率的です。
- 基本的な認証フロー
SaaS CIAM製品の基本的な認証機能のテスト。システムが想定通りに動作するかを確認 - 既存システムとの連携ポイント
他のシステムと連携できるか、互換性に問題がないかを確認
評価基準の設定
POCの結果を判断するために、事前に評価基準を設定すると進捗把握に役立ちます。評価基準があることで、どの要素を成功とし、どこが改善ポイントなのかを明確にできます。以下のような基準を設定しておくと、適切な意思決定に効果的です。
- パフォーマンス指標
認証フローの処理速度など、定量的な指標 - ユーザー体験の品質
エンドユーザー視点で、システムを使用する時のユーザーインターフェース(UI)体験や直感性 - 開発者体験の良さ
開発者が利用するAPIや、設定画面の使いやすさ、技術面の課題を評価 - 運用負荷の見込み
実際に運用することを見据え、システムの保守や管理にかかる負荷を事前に見積もり、
導入後の運用も現実的に無理がないかを確認
POCフェーズでは検証環境で、限定されたユーザーだけでテストし、技術的な課題の早期発見や、運用上で必要な検討事項を洗い出します。
3.計画・設計フェーズ(1〜3か月)
このフェーズでは、SaaS CIAM製品を自社のシステム環境に適用するための具体的な設計を行います。適切な計画と設計が、スムーズな導入を進める鍵となります。
データ活用の設定
- データを取得する目的の明確化
- 取得したデータの活用方法
社内ワークフローの整備
- 社内体制と役割分担
- 責任分担(RACI)の明確化(関係部署の役割を明確かし、業務フローの構築につなげる
アーキテクチャ設計
- CIAMと既存システムの統合方法の詳細設計
- データフローの設計(ユーザー登録から認証、権限管理の流れを可視化)
- セキュリティアーキテクチャの設計
ユーザー体験の設計
- ログインや会員登録時の導線。画面遷移の構成
- 認証エラー時や同意取得の際にユーザーが迷わないよう配慮したメッセージ設計
- ユーザーが直感的に操作できるUI/UXの設計
- デザインやコピー表現のトーン&マナーを揃えたユーザー視点の仕立て
移行計画
- 既存データの整理と新システムでの標準化
- 段階的移行のアプローチ
- フォールバック計画
ロードマップ作成
- フェーズ分けしたロールアウト計画
- 各フェーズのマイルストーンと期間(チェックポイントを設けることで、開発の進捗を測定)
計画を立てることで、次のステップの実装フェーズへとスムーズに進みます。
以上、SaaS CIAM導入のポイントや、準備フェーズ、POCフェーズ、計画設計フェーズのご紹介でした。次回の後編では実装フェーズ、ロールアウトフェーズ、最適化・運用フェーズを解説します。
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